偶然と必然

彼と彼女は都庁の展望台へ向かった。
エレベーターへ乗る前、ふと時計を見ると
4:44だった。
彼女は少し特別な気がした。
45階へあがり、景色を眺めていると
夕陽がみるみる沈んでいった。
富士山に、どんどん吸い込まれていった。
この時間、ここに来たからこの景色を見ることができた。
彼女はさっきよりも特別な気がした。
 
彼は次の日も都庁の展望台へ向かった。
1人で。
何気なく時計を見ると今日も
4:44だった。
彼は昨日よりももう少し特別な気がした。
45階へあがり、景色を眺めたが
靄がかかって昨日のような景色を見ることはできなかった。
高校生のカップルが景色なんかそっちのけでキスをしていた。
 
彼女が彼を見送った次の日、
彼女は熱をだした。
少し遠い街で彼も熱を出していた。
 
でも2人は少しも特別だと思わなかった。