私が今まで出会った男性で1番好きな人に久しぶりに会って、普段無口ではない私なのに何を話していいのか戸惑ってしまい、なかなか言葉が出ず、目線を上にそらしたり、運ばれてきた料理にひたすら七味をかけたり、よどんだ煙草の煙をひたすら見上げていたら、何か変わった事は?と聞かれ、特に何もないよ、とぶっきらぼうに答えると、そんな事ないだろう、と言われたので考えてみたけれどやっぱり私に変わった事はなくて、あなたは何か変わった?と聞こうと思ったのだけれど聞くまでもなく彼には変わった事が沢山あって、私はその変化を彼の口から聞くのが怖くて口を閉じ、かけすぎた七味を辛いと言いながら前髪をいじったりしているうち終電の時間になり、またねと手を振って走った。
電車が来た時、風で前髪がふわっとあがりそれを押さえたら、そう言えば彼は短めに切ってしまったこの髪に対して何もいわなかったなと思った。